サッチ―騒動と朝鮮たたき 「サッチ―騒動も6ヶ月でしたから、この騒ぎもその程度で収まるでしょう」。昨年9月に拉致騒動が始まった時、日本の友人はそう言った。野村元阪神タイガース監督夫人・沙知代さんに対するマスコミの新人攻撃を引き合いに出して、彼は私を慰めてくれたのだった▲だが私は、拉致騒動はもっと長期にわたるだろうと言った。それには根拠があった。拉致騒動に先行して核疑惑、不審船、麻薬、ニセ札、テポドンなど常軌を逸する朝鮮たたきがつづけられてきたからである。これら一連の騒動の裏には、自衛隊海外派兵の拡大という日本帝国主義復活の流れがある▲冷戦終結後アメリカは、しきりに日本の海外派兵を促してきた。日本支配層は外圧に押されるふりをしながら、自衛隊海外派兵の道を広げてきた。PKO協力法、テロ特別法、周辺事態法、武力攻撃事態法などがそれである。こうして今や日本自衛隊は中東からアフリカ、アジア、中南米に到る10余カ国に軍靴を踏み入れている▲戦時総動員態勢をきずく法整備もすでになされている。武力攻撃事態法がまさにそれ。ほかにも例をあげると住民基本台帳法(国民総背番号制)、通信傍受法(盗聴法)、メディア三法(言論統制)などがある。歴史歪曲の教科書検定、国旗国歌法、靖国神社への政府要人参拝、マスコミの右傾化など思想動員も進んでいる▲日本支配層は対米講和後、50年代末に岸内閣で帝国主義復活を企んだが挫折。そこで60〜70年代は経済成長に専念した。80年代に入ると、儲けすぎた独占資本が、余った資本のはけ口を求めて海外に進出。恐らく日系海外子会社の従業員は現在300万人を下らないだろう▲この海外権益保護のため、財界は帝国主義的政策を政府に求めるようになった。財界だけならまだしも、労資協調路線の労組も同様の要求をしている。こうして足場を失った社会党(現社民党)は退潮。現今日本の右傾化のルーツをたどれば、資本の大々的な海外進出に行き着く▲小泉首相は2005年改憲を公約した。自衛隊は専守防衛や国連協力の看板をかなぐり捨てて、本物の軍隊として登場する。最近『ワシントン・ポスト』紙に日本の防衛大学校長が、朝米不可侵条約反対の論文を寄せた。「北朝鮮の脅威」がなくなれば、自衛隊強化の口実がなくなるからだろう。明治日本の征韓論は平成日本の朝鮮たたきとなって再演されている。ただし相手は征韓論の時代と全く違っていることを、日本支配層は果たして理解しているのだろうか。 南圭一 2003.11.13 |