【展望台】2

切り札は朝鮮の手中にある

ブッシュの朝鮮政策は「ABCだ」と言われる。Anything But Clinton、クリントンでなければ何でもよい。何でもかんでもクリントンと逆のことをするのが彼の“政策“らしいという揶揄である。実際、クリントンは朝米基本合意文を結び、国交正常化寸前まで行ったのに、ブッシュが何もかもメチャクチャに壊してしまった▲朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、核先制攻撃を公言した。基本合意文の中心は、朝鮮側が寧辺の原発建設を凍結する代わりに、アメリカは200KW分の軽水炉型原発を提供するということである。約束期限は今年1021日だが、軽水炉建設用地の土台工事すら未完成のまま放置。おまけに年間50万トンの重油提供義務まで一方的に停止した▲さらにブッシュは、朝鮮側が先に核を放棄すれば対話に応じる、但し見返りは与えない、という基本態度を表明した。これに対して朝鮮側は朝米直接対話、朝鮮半島問題の一括妥結と双方の同時行動を提案している。つまり一方は無条件全面降伏か戦争かと高圧的だが、他方は平等の立場で対話による解決をめざしている▲その後アメリカは、直接対話はいやだが多者会談なら応ずるとし、先核放棄の前提条件を事実上撤回した。こうして4月の朝米中三者会談が実現。しかも実質問題は朝米2国間で討議され、事実上の直接対話だった。先頃の六者会談も同じこと。直接対話回避の米戦略は事実上崩れ去った。さらに、不可侵条約締結を拒否してきたアメリカが最近、不可侵の誓約を文書化すると軟化してきた。これまた彼らの後退▲じりじりと追いつめられているアメリカは、周辺諸国とくに中国を引き入れて朝鮮を封じ込めようと懸命だ。マスコミに「朝中の確執」を誇張した報道が増えてきたのはその表れ。だが、アメリカの勢力が鴨緑江まで伸びたら、中国はそれこそ大変だろう。朝中の利害一致は中米の利害関係よりはるかに強く、本質的である。朝中離間策は成功しない▲5月5日付のニューヨークタイムズによると、ブッシュはハワード豪首相との会談で、今後は北朝鮮の兵器級核物質の輸出阻止体制を追求していく意向を示唆した。製造阻止でなく、輸出阻止であることに注目せよ。朝鮮の核を容認し、それとの共存政策に転換すると受け取れる。朝鮮はすでに核抑止力という切り札を持っている。アメリカの核威嚇は効き目がなくなった。ブッシュはまだ粘るかもしれないが、彼の行く道は結局Nothing But Clintonクリントンと同じ。(南圭一)0.10.22